営業秘密の保護～漏洩防止策を講じていますか

長崎，福岡で，「企業側」の労務問題を取り扱っている弁護士植木博路です。

退職従業員からの情報漏洩リスク

超高速・大容量通信規格「５Ｇ」の技術情報などを転職先に不正に持ち出したとして，ソフトバンクの元社員が不正競争防止法違反容疑で逮捕されたとのニュースを覚えている方も多いのではないでしょうか。

営業秘密は企業の重要な財産です。営業秘密を守る体制の構築・整備は，企業の責務と言っても過言ではありません。

そして，企業の情報漏洩の大多数が，退職した従業員からとも言われています。

退職する従業員と秘密保持に関する合意書を締結しておくなど，対策が重要です。

もちろん，営業秘密の漏洩をした者に対しては，利用の差止請求，損害賠償請求，刑事告訴などの事後にとりうる手段もあります。また，就業規則に定めておくことにより，懲戒処分をすることもできます

しかし，ひとたび営業秘密が漏洩してしまえば，漏洩がなかった状態に戻すことはできません。また，不正競争防止法の適用により差止請求や刑事告訴をするためには，秘密情報を適切に管理していなければなりません。

事前の対策が極めて重要です。

例えば，退職する従業員と秘密保持に関する合意書を取り交わしたり，従業員に秘密保持に関する誓約書を提出してもらうなどの措置です。

第１条　私は，貴社に対し，以下の事項を誓約します。　　

いずれかの□に☑を入れます。☑を入れた方が誓約事項です。　

□　私は，私が管理または保持していた以下の①～●の情報(以下「秘密情報」と言います)を，貴社へ返還しており(貴社の指示がある場合には破棄しており)，現時点で，私において秘密情報一切を保持していないことを誓約します。　

□　私は，貴社を退職するにあたり，私が管理または保持している秘密情報(以下の①～●の情報。以下「秘密情報」と言います)を貴社へ返還し(貴社の指示がある場合には破棄しており)，令和　年　月　日時点で，私において秘密情報一切を保持していないことを誓約します。　　　　　

①　貴社の顧客・顧客見込み先等の名称，氏名，住所，生年月日，契約内容，契約条件，提案書等　　

②　貴社の取引先・取引見込み先等の名称，氏名，住所，生年月日，契約内容，契約条件，提案書等　　　　

③　売上金額，仕入れ金額その他貴社の財務状況に関する一切の情報　

　　　・・・以下，省略・・・

第２条　私は，秘密情報を漏洩することが，不正競争防止法に違反する行為になる場合があることを十分に理解し，秘密情報の使用や漏洩を絶対に行わないことを誓約します。

以下の項目のうち，☑が入らなかった項目はいくつありますか？

営業秘密の保護についてご不安のあるとき，規程やルールの整備が必要なときは，弁護士植木博路にご相談ください。

□　経営者，役員等幹部職員が営業秘密の重要性を理解していますか　　

□　経済産業が作成した営業秘密管理指針を読んだことがありますか　

□　自社の保有する秘密情報にどのようなものがあるか，分類・整理して把握していますか　　

□　他社から取得した秘密情報を把握していますか　　

□　秘密情報に触れることができる者を制限していますか　　　

□　秘密情報には営業秘密であることがわかるような表示をしていますか　　

□　情報管理に関する社内規程を整備していますか。整備した社内規程を役員，従業員に周知していますか　

□　テレワークを実施するにあたり，秘密情報を社外に持ち出す機会が増えましたか。その場合に対策を実施していますか　　　

□　秘密情報を取引先に提供するときには、秘密保持契約を結んでいますか　　　

□　入社時や退職時に秘密保持の誓約書を提出させていますか　　　　

□　営業秘密の管理について社内研修を実施していますか。他社の営業秘密情報の持ち込み・不正利用を防止するための研修もできていますか　　

□　情報漏洩事故発生を想定した対応のシミュレーションをしたことがありますか

(長崎，福岡で「企業側」の労務問題を取り扱っています)