解雇について

解雇について

1 分類

解雇は、使用者の一方的な解約の意思表示によって労働契約が終了することですが、解雇事由ごとに、大きく、以下の3つに分類されます。

 普通解雇…労働者の能力不足等を理由とするもの

 懲戒解雇…労働者の非違行為を理由とするもので、懲戒として行われるもの

 整理解雇…使用者の経営不振等を理由とするもの

2 規制

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とされます(労働契約法16条)。

また、使用者は、有期労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができなません(労働契約法17条)。

解雇が規制される趣旨は、「解雇は労働者の身分そのものを喪失させ、労働者に重大な不利益を与える。労使間の力の不均衡に照らせば、解雇を規制する必要がある」というものです。

※ 上記解雇権濫用法理以外に、業務上の傷病等による休業期間についての解雇制限(労働基準法19条)や解雇予告期間が30日とされていること(労働基準法20条)など、労働者は解雇につき種々の保護を受けます。

3 労働契約法16条の中身

 ⑴ 客観的に合理的な理由があるか否か

  ① 就業規則の解雇事由に該当する事実があること

 解雇は労働者の身分を剥奪するものであり、労働者が受ける不利益は重大です。そのため、労働者に予測可能性を与えるとの要請から,就業規則に定めた解雇事由が存在しなければ、解雇はできないとされています(限定列挙説)。

 

  ② その事実が「雇用を終了させてもやむを得ない」と認められる程度の事実であること(解雇は最後の手段である)

 ⑵ 社会通念上相当か否か

   「雇用を終了させてもやむを得ない」と認められる程度の事実が発生したとしても、その他の事情から、解雇が無効とされる場合があります。

   例えば、アナウンサーが2週間に2回寝過ごし、放送できなかったことを理由に解雇された場合について、解雇事由はあるとしながら、本人が反省しており、勤務成績が良く、過去に処分歴がなかったこと、同じ事件に関与した他の労働者は解雇されていないことなどを考慮して、解雇を無効とした裁判例があります。

4 解雇が無効とされた場合

 解雇が無効と判断されると、労働契約が存続している、すなわち解雇された労働者は、解雇時点も、その後も、使用者に雇用され続けていることになります。

 使用者は、解雇後の期間についての賃金を支払う義務を負います(民法536条2項第1文)。

 ただし、労働者が解雇期間中に他で収入を得ていた場合は、以下のア、イ、ウとなります。労働者が解雇期間中に収入を得ていた場合でも、使用者は平均賃金の6割は支払わなければならないということです。

 ア 解雇された労働者が解雇期間中に他の職について利益を得ていた場合は、使用者は、前記労働者に解雇期間中の賃金を支払うにあたり、前記利益(中間利益)を賃金額から控除することができる。…民法536条第2文

 イ ただし、前記賃金額のうち労働基準法12条1項所定の平均賃金の6割に達する部分は、利益控除の対象とはできない。…労働基準法26条

 ウ もっとも、労働基準法12条4項所定の賃金(賞与等)については、その全額を利益控除の対象とすることができる。

エ 賃金から控除しうる中間利益はその利益の発生した期間が前記賃金の支給対象となる期間と時期的に対応するものであることを要する。

弁護士 植木 博路

(長崎、福岡で「企業側」の労務問題を取り扱っています)

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