「労働者の義務違反」

「労働者の義務違反」

長崎,福岡で,「企業側」の労務問題を取り扱っている弁護士植木博路です。

今回は,「労働者の義務違反」について,話をしたいと思います。

1 労働者の義務

  使用者と労働者とは労働契約を結び,それにより賃金支払義務・労働義務を中心として様々な義務を負います(反面として権利を有します)。

  労働者が追う中心的義務は,労働義務です。

2 労働者の義務違反

 ⑴ ノーワークノーペイの原則 

労働者が労働義務に違反して労働を遂行しなかった場合,賃金請求権は発生しません(ノーワークノーペイの原則)。賃金は,労働者の具体的な労働に対する対価であるからです。

   労働者が故意・過失により欠勤・遅刻した場合,労働義務違反であり(労働義務の履行がない),労働が提供されなかった時間につき,賃金請求権は発生しません。

   労働者は労働契約上,使用者の適法な指揮命令に従って労働する義務を負うので,指揮命令に反する労働を提供しても,債務の本旨にしたがった労働とはいえず,賃金請求権は発生しません。出勤した労働者が,行うべき書類作成を行わず,ただぼーっと座ったまま,上司が注意しても,無視するならば,その労働者は労働しているとは言えません。また,必要性がないにもかかわらず,労働者が勝手に休日に会社にでてきて,作業を行ったとしても,債務の本旨にしたがった労働とはいえず,賃金請求権は発生しません。

 ⑵ 損害賠償責任

   労働者の労働義務違反によって使用者が損害を被れば,使用者は労働者に対し,損害の賠償を請求することができます。

   しかしながら,それは,資力の乏しい労働者にとって過酷な結果をもたらすとして,学説・裁判例上,労働契約の特質を考慮した責任制限法理が主張されています。

   例えば,名古屋地判昭和62年7月27日(労働判例505号66頁)は,労働者が重過失により高価な工作機械を破損したケースで,深夜勤務中の事故である点,会社のリスク管理上の問題点(保険未加入)を重視して,損害の4分の1(333万6000円の四分の一に相当する83万4000円)を認めました。

   もっとも,労働者側の悪質性が高い場合は,全額が認められると考えるべきです。東芝メディカルシステムズ事件(大阪地判平成27年3月31日)は,労働者が架空取引及び水増取引により会社に損害を被らせた事案につき,損害額全額(4421万8506円)の賠償責任を認めています。

弁護士 植木 博路

(長崎,福岡で「企業側」の労務問題を取り扱っています)

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