「高度プロフェッショナル制度とは?」(弁護士が解説)

「高度プロフェッショナル制度とは?」(弁護士が解説)

長崎,福岡で,「企業側」の労務問題を取り扱っている弁護士植木博路です。

今回は,「高度プロフェッショナル制度」(以下「高プロ」と言います)について,話をしたいと思います。

≪目次≫

1 高プロの概要

高度の専門的知識等を有し,職務の範囲が明確で一定の年収要件を満たす労働者を対象として,労使委員会の決議や労働者本人の同意を前提として,年間104日以上の休日確保措置や健康管理時間の状況に応じた健康・福祉増進措置等を講ずることにより,労基法に定められた労働時間,休憩,休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用しない制度です。

高プロ成立の経緯につき,菅野和夫「労働法第12版」㈱弘文堂2019年(P.551~)は,「産業社会の情報化・グローバル化のなかで,高度に専門的裁量的な業務に従事するプロフェッショナル社員が十分に能力発揮するためには,効果的な濫用防止策を施しつつ,その自律的働き方により適合的な適用除外制度に再編成する必要があった。しかしながら,他方では,1990年代からの長期経済低迷(特に1997年金融危機以降のその深刻化)のなかで,正社員の減員・採用抑制が進んで,長時間労働による心身の健康問題や仕事と生活のアンバランスの問題が悪化した。かくして2007年2月に法案要綱化された,自己管理型の労働者につき一定水準以上の年収と一定日数以上の年間休日等を要件とする適用除外制度が,『残業代ゼロ法案』との強い批判を浴びて,国会上程を見送られた。・・・2015年通常国会に提出された高度プロフェッショナル労働制の法案は,対象労働者の健康・福祉確保措置を含めて考案されたが,なお適用除外制度創設への警戒感が強く,実現しなかった。この間も,国際金融サービス業において労働時間の管理を受けず年間数千万円の高額の報酬を得て自己裁量で働くトレーダーについて,時間外労働手当は基本給の中に含まれており別個の請求はできないとして,高収入・自己管理型専門労働者に関する時間外労働規制の適用除外を先取りしたような裁判例(モルガン・スタンレー・ジャパン事件―東京地判平17・10・19労判905号5頁)が出て,上記の立法課題を改めて明らかにした。その後,過重労働等の撲滅に向けた監督行政が強化されるなか,2018年通常国会提出の働き方改革関連法案では,時間外労働の罰則付上限の導入,月間60時間超え時間外労働への5割割増率に関する中小企業適用猶予の撤廃,年次有給休暇の取得促進策(5日を限度とする使用者の時季指定義務。以上,労基法改正案),過重労働による健康被害防止策(労安衛法改正案)とのパッケージにおいて,練り直された高度プロフェッショナル労働制が盛り込まれ,同年6月に法案全体として成立した」と説明しています。

2 対象業務

高度の専門的知識等を必要とし,その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務であり,省令では,以下のとおり定められています。

① 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務

② 資産運用(指図を含む。以下この号において同じ。)の業務又は有価証券の売買その他の取引の業務のうち、投資判断に基づく資産運用の業務、投資判断に基づく資産運用として行う有価証券の売買その他の取引の業務又は投資判断に基づき自己の計算において行う有価証券の売買その他の取引の業務

③ 有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務

④ 顧客の事業の運営に関する重要な事項についての調査又は分析及びこれに基づく当該事項に関する考案又は助言の業務

⑤ 新たな技術、商品又は役務の研究開発の業務

※ ①~⑤の業務でも,業務に従事する時間に関し使用者から具体的な指示(業務量に比して著しく短い期限の設定その他の実質的に当該業務に従事する時間に関する指示と認められるものを含む。)を受けて行うものは除かれます。

※ 対象業務につき,指針(労働基準法第41条の2第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針) でより詳しい説明がなされています。

3 対象労働者

① 使用者との間の書面その他の厚生労働省令で定める合意に基づき職務が明確に定められている必要があります。※1

② 1年間当たりの賃金の額が「基準年間平均給与額」(厚労省の毎月勤労統計により算定される労働者1人当たりの給与の平均額)の3倍の額を相当程度上回る水準として省令で定める額以上である必要があります。※2

※1 ①業務の内容,②責任の程度,③職務において求められる成果その他の職務を遂行するに当たって求められる水準を明らかにした書面に対象労働者の署名を受け、当該書面の交付を受ける方法(当該対象労働者が希望した場合にあっては、当該書面に記載すべき事項を記録した電磁的記録の提供を受ける方法)とされています。

※2 1075万円以上とされています。

4 導入の流れ

⑴ 労使委員会の決議

対象となる事業場において,労使委員会により,その5分の4以上の多数  により,必要な事項を決議します。なお,労使委員会の設置方法については,「労使委員会の設置方法」をご確認ください。

⑵ 決議しなければならない事項は,以下のものです。

① 対象業務

② 対象労働者の範囲

③ 健康管理時間を把握する措置

④ 年間104日以上、かつ、4週間を通じ4日以上の休日付与

⑤ 選択的措置

⑥ 健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置

⑦ 同意の撤回手続

⑧ 苦情処理措置

⑨ 不利益取扱い禁止

⑩ その他厚生労働省令で定める事項

・決議の有効期間,決議は自動更新しないこと

・委員会の開催頻度及び開催時期

・50人未満の事業場である場合には,労働者の健康管理等を行うのに必要 な知識を有する医師を選任すること

・労働者の同意及びその撤回,合意した職務の内容,支払われる賃金の額,健康管理時間,健康確保措置として講じた措置,苦情処理に関して講じた措置,医師の選任に関する記録を,決議の有効期間中及びその満了後3年間保存すること

⑵ 決議の届出

決議は,労働基準監督署長に届け出なければなりません。

⑶ 本人同意

対象労働者の書面による同意が必要です。

同意をしないことを理由とした不利益取扱いは禁止されています。

労働者側からの同意の撤回は可能であり,同意撤回を理由とする不利益取扱いも禁止されています。

※ 高プロ対象者が同意の撤回を申し出た場合の労働条件は,高プロの適 用となる前に戻ると考えるべきですが,その旨を就業規則等に定めておく必要があります。

※ 高プロの適用を前提として雇用した労働者が,高プロの同意を撤回した場合に,解雇できるのか。解雇はできないと考えます。同意撤回を理由とする不利益取扱いにほかならないからです。

⑷ 対象労働者を対象業務に就かせる,労基署への定期報告

対象労働者については,労働時間,休憩,休日及び深夜の割増賃金に関する規定が適用除外となります。

使用者は,以下の3つの状況(前述の労使委員会が決議しなければならない事項③~⑤に関する状況)を,決議から6か月以内ごとに,労働基準監督署長に報告しなければなりません。

③ 健康管理時間を把握する措置

④ 年間104日以上、かつ、4週間を通じ4日以上の休日付与

⑤ 選択的措置

5 高プロに関するお問合せ,ご相談は弁護士植木博路へ

 高プロ導入を検討中の会社でご不明,お困り事がありましたら、お気軽にご相談ください。事務所での面談によるご相談のほか,オンライン相談も受けつけています。オンライン相談のお問合せ

  なお,お問合せ後の流れは,次のようになります。

弁護士 植木 博路

(長崎,福岡で「企業側」の労務問題を取り扱っています)

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