コラム

何によって労働条件が決定されるか?

2021年7月1日

労働条件とは

「労働条件」とは、労働するにあたっての条件のことです。賃金、労働時間、休日、休暇、人事、服務規律、懲戒処分、安全衛生などです。労働契約における権利義務の内容と言ってよいと思います。

何によって労働条件が決定される?

ある労働者の労働条件はどうなっているかを確認する場合に、何を確認すればよいでしょうか。労働条件は労働契約における権利義務の内容ですから、それは会社と労働者の合意によって定まる・・・ただそれだけのことと考える人もいるかもしれません。

しかし、労働条件の決定にあたっては、個別合意はもちろん、法律、労働協約、就業規則、労働慣行、そしてこれらを補充する判例を確認する必要があります。

労働基準法

例えば、ある労働者Aが会社と「1日10時間働く。賃金は12,000円」と合意したとします。労働者Aの労働条件(賃金について)は「1日10時間働くこと、その対価として支払われる賃金が12,000円である」と考えてよいかというと、違います。「1日10時間働く」という部分は、労働基準法32条2項に違反し、無効です。無効となった部分は労働基準法32条2項の内容で規律され、「1日8時間労働」となります(労働基準法13条)。そして「賃金が12,000円」という部分は有効のままです。

 結果、「1日8時間働く。その対価として12,000円の賃金を支払う」ということになります。そして、労働者Aが1日10時間働き、会社が12,000円を支払った場合には、8時間分の賃金12,000円は支払われているが、残り2時間分の賃金が未払いであるということになります。この2時間分の賃金については0.25の割増賃金もプラスされることになります(労働基準法37条)。すなわち、この2時間分の未払賃金は、下記計算式により3,750円となります。

(計算式)(12,000÷8)×1.25×2=3,750円

会社は、10時間分の賃金として12,000円を支払うつもりであったのに、労働基準法違反に気づかずに、「1日10時間働く。賃金は12,000円」と合意してしまったがために、10時間分の賃金として15,750円もの賃金を支払うはめになったのです。

何によって労働条件が決定されるかは、個人事業主や会社経営者が押さえておくべき重要な知識です。今日はここまでにし、この話の続きは、次回コラムにてさせていただきます。

弁護士 植木 博路

(長崎、福岡で「企業側」の労務問題を取り扱っています)

植木博路ひろみち

長崎県弁護士会所属、弁護士法人 ALAW&GOODLOOP代表社員

主な取扱分野

不動産法務、労働法務(使用者側、人事労務管理に関する制度構築支援,就業規則の作成)、会社法務、株主総会対策、事業再生、M&A、契約書作成、債権回収、その他企業法務全般民事家事の示談交渉、調停、訴訟

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