労働組合から通知が届いたら?

労働組合から通知が届いたら?

長崎,福岡で,「企業側」の労務問題を取り扱っている弁護士植木博路です。

今回は,労働組合から団体交渉を申し入れる通知が届いたら,どう対応するかについて,使用者がおさえておくべきポイントを説明したいと思います。

ポイントは,

①弁護士に相談する,②あせらない,③無視はしない,

です。

 また,組合に加入したこと,団交をしていることを理由に,労働者を不利益に取り扱うことはできません。

義務的交渉事項か任意的交渉事項か

 団体交渉の申し入れがあった事項が,「団体交渉を申し入れた労働者の団体の構成員たる労働者の労働条件その他の待遇,また,当該労働者の労働条件に影響を与える事項」であれば,義務的団体交渉事項であり,団体交渉に応じる必要があります。例えば退職した労働者が解雇を争うとして,解雇について団体交渉の申し入れがあった場合です。

 対して,新商品の名称を●●とすることや,新CMに芸能人Aを起用することなどは,義務的交渉事項ではなく,使用者は交渉に応じる必要はありません。

     

誠実交渉義務

 団体交渉において,使用者は労働組合との交渉にあたり,誠実交渉義務を負います。しかし,これは,必ずしも相手方の要求に応じることを意味しません。

 使用者が誠意をもって交渉を続けても,これ以上進展する見込みがない段階に立ち至った場合や,逆に組合の側に問題がある場合には,交渉を打ち切っても,違法ではありません。ただし,誠意をもって交渉したというためには,相手方の要求が何であるかに耳を傾け,その要求に事実誤認があるのであれば,事実誤認である旨を誠実に説明する必要があり,加えて,その説明のための資料を提示するなどすべきです。

(東京地判平元9・22労判548・64)。

「使用者は,自己の主張を相手方が理解し,納得することを目指して,誠意をもって団体交渉に当たらなければならず,労働組合の要求や主張に対する回答や自己の主張の根拠を具体的に説明したり,必要な資料を提示するなどし,また,結局において労働組合の要求に対し譲歩することができないとしても,その論拠を示して反論するなどの努力をすべき義務があるのであり,合意を求める労働組合の努力に対しては,右のような誠実な対応を通じて合意達成を模索する義務がある」

交渉決裂

 交渉が決裂した場合は,組合側が労働委員会に救済申立てを行う可能性があります。「会社が交渉を打ち切ったのは,不当労働行為(誠実交渉義務違反)であるから,救済命令(貴社が交渉に応じることを命ずるもの)を出せという申立てです。

 しかし,使用者としては,誠意をもって交渉したのですから,組合の行った救済申立ては認められないとして,争うことになります。

弁護士 植木 博路

(長崎,福岡で「企業側」の労務問題を取り扱っていま

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