何によって労働条件が決定されるか?
何によって労働条件が決定されるか?
労働条件とは
「労働条件」とは、労働するにあたっての条件のことです。賃金、労働時間、休日、休暇、人事、服務規律、懲戒処分、安全衛生などです。労働契約における権利義務の内容と言ってよいと思います。
何によって労働条件が決定される?
ある労働者の労働条件はどうなっているかを確認する場合に、何を確認すればよいでしょうか。労働条件は労働契約における権利義務の内容ですから、それは会社と労働者の合意によって定まる・・・ただそれだけのことと考える人もいるかもしれません。
しかし、労働条件の決定にあたっては、個別合意はもちろん、法律、労働協約、就業規則、労働慣行、そしてこれらを補充する判例を確認する必要があります。
労働基準法
例えば、ある労働者Aが会社と「1日10時間働く。賃金は12,000円」と合意したとします。労働者Aの労働条件(賃金について)は「1日10時間働くこと、その対価として支払われる賃金が12,000円である」と考えてよいかというと、違います。「1日10時間働く」という部分は、労働基準法32条2項に違反し、無効です。無効となった部分は労働基準法32条2項の内容で規律され、「1日8時間労働」となります(労働基準法13条)。そして「賃金が12,000円」という部分は有効のままです。
結果、「1日8時間働く。その対価として12,000円の賃金を支払う」ということになります。そして、労働者Aが1日10時間働き、会社が12,000円を支払った場合には、8時間分の賃金12,000円は支払われているが、残り2時間分の賃金が未払いであるということになります。この2時間分の賃金については0.25の割増賃金もプラスされることになります(労働基準法37条)。すなわち、この2時間分の未払賃金は、下記計算式により3,750円となります。
(計算式)(12,000÷8)×1.25×2=3,750円
会社は、10時間分の賃金として12,000円を支払うつもりであったのに、労働基準法違反に気づかずに、「1日10時間働く。賃金は12,000円」と合意してしまったがために、10時間分の賃金として15,750円もの賃金を支払うはめになったのです。
何によって労働条件が決定されるかは、個人事業主や会社経営者が押さえておくべき重要な知識です。今日はここまでにし、この話の続きは、次回コラムにてさせていただきます。
弁護士 植木 博路
(長崎、福岡で「企業側」の労務問題を取り扱っています)