『長崎県の最低賃金』時間額898円に!

『長崎県の最低賃金』時間額898円に!

長崎、福岡で、「企業側」の労務問題を取り扱っている弁護士植木博路です。

今回は、長崎県の最低賃金が時間額898円になることにつき話をしたいと思います。

1 長崎地方最低賃金審議会の答申

  長崎地方最低賃金審議会は、令和5年8月17日、長崎労働局長に対し、「長崎県最低賃金」を45円引き上げて、時間額898円とするよう答申を行いました。

  ※ 答申文の写しは下記です。  

https://kigyougawa-roumu.jp/wp-content/uploads/2023/09/20230908181956222.pdf

  なお、答申では、使用者側委員から国に対する要望として、「近年最低賃金が大幅に引き上げられるとともに、10月上旬に改定発効されていることから、パートタイム労働者等について税制上の扶養控除及び社会保険上の被扶養認定を受けるために就労時間等の調整を行わなければならない状況が事業活動の支障にもなっている。このような状況を解消するために、最低賃金の改定の発効日を1月1日と制度化することについて国おいて検討することを強く要望する」旨が記載されており、私もこの要望は妥当と考えます。

2 最低賃金に関する規制

  労基法28条は「賃金の最低基準に関しては、最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)の定めるところによる」と定めています。そして、最低賃金法は、地域別最低賃金と特定最低賃金(産業別最低賃金)を定めています。

  使用者は、最低賃金額以上の賃金を支払わなければならず(最賃法4条1項)、最低賃金額に達しない賃金を定める労働契約の部分については強行的・直律的効力が定められています(同条2項)。

  最低賃金の規制対象となる賃金は、1か月を超えない期間ごとに支払われる、通常の労働時間または労働日の労働に対し支払われる賃金です。この対象賃金から除外される賃金としては、臨時に支払われる賃金(結婚手当、病気見舞金、退職金等)、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)、所定労働時間を超える労働に対して支払われる賃金(時間外労働割増賃金等)、所定労働日以外の労働に支払われる賃金(休日労働割増賃金等)、深夜労働に対して支払われる賃金のうち通常の労働時間の賃金計算額を超える部分(深夜割増賃金等)、当該最低賃金において算入しないことを定める賃金(精皆勤手当、通勤手当、家族手当)があります(最賃法4条3項、最賃則1条)。

3 地域別最低賃金はどのようにして決まるか

  地域別最低賃金は、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならないとされています(最賃法9条2項)。また、労働者の生計費を考慮するに当たつては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとするとされており、最低賃金は生活保護を下回らない水準とするものとされています(最賃法9条3項)。

  具体的には、まず、中央最低賃金審議会が、厚生労働大臣の求めにより、全国の都道府県をABCDの4ランクに分けてそれぞれの最低賃金の目安額を審議し提示します。都道府県労働局長は、地方最低賃金審議会に対し、この目安額を参考にした審議を求め、その答申に基づいて当該都道府県の最低賃金額を決定します。

弁護士 植木 博路

(長崎、福岡で、「企業側」の労務問題を取り扱っています)

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